紅の豚に欠かせないのが、飛行艇。
たくさんの飛行艇乗りたちと、空賊と、ロマン溢れる空の中に消えていく男たち。
その機体に想いを馳せてみたいと思います。
飛行艇と飛行機
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/一五式飛行艇
まず、飛行艇と飛行機の違いについてみてみましょう。
飛行艇とは、飛行機と船の両方の特徴を持ち合わせているものです。
陸だけでなく海面にも着水できる飛行機が飛行艇です。
海面はいわば無限の滑走路。
様々な利点があるといいます。
例えば滑走路だと必ずある重量制限がないから荷物をより多く詰めたり、狭小な土地で滑走路の取れないような場所でも離着陸できるという利点です。
しかしながら、陸と海どちらにも対応するメンテナンスが必要になるなど、難点もあります。
開発は続いており、その海と空のロマンを持ち合わせる飛行艇の利点への追求により、一定の需要は衰えないようです。
機体モデルについて
引用元:https://matome.naver.jp/odai/2138088921097201301
紅の豚に登場する、ポルコの機体は、サボイアS.21。
物語の中では1艇だけ作られたことになっています。
操縦が困難なことから、倉庫の中でずっと眠っていた設定になっています。
空賊たちがポルコを倒そうとして、ドナルド・カーチスという飛行艇乗りを雇い、襲撃するが、ポルコはこれを免れます。
壊れた機体をフィオ・ピッコロが設計士として修理することになります。
サボイアは実在したイタリアの航空機メーカーで、爆撃機などを製造していました。
宮崎駿監督はメカオタクと言われています。
また、軍事マニアでもあることから、そのアニメの世界の中には、宮崎駿監督のメカに対する願望とリアルの追及をちりばめているのです。
機体の名前
引用元:http://home.b01.itscom.net/y-kano/air-11-savoia.htm
ポルコの愛艇は「サボイアS.21」であることには触れました。
これは実在した飛行艇ではなく、実際のモデルは「マッキM.33」とされています。
宮崎駿が少年だった頃に見た飛行艇の写真があり、それがベースになったとのことです。
確かにフォルムがポルコの機体によく似ています。
一時期に実際に活躍していた飛行艇への並々ならぬ憧れ。
宮崎駿監督は、紅の豚の物語の中で、これらの飛行艇を復活させ、幼い頃の夢を叶えたということでしょう。
機関銃の話
引用元:http://moviemezzanine.com/porco-rosso-blu-ray-review/
ピッコロのおやじの孫娘、フィオはポルコの飛行艇を修理後、初フライトの時に、機体に乗り込もうとします。
「私も行くの。」
あっけらかんと言うフィオにポルコは呆れますが、フィオは聞く耳を持たないのです。
理由は初めての仕事をちゃんとやりたいとのことでした。
一度乗って確かめて、手直ししたいというフィオ 。
そのフィオに対して、ポルコは呆れたように、でも2機ある機関銃のうち1機を下ろすように指示します。
お尻が入らないだろうとばかにしているような態度も、照れ隠しにしか思えません。
このシーンはフィオを設計士として認めたポルコの気持ちが素直に出ていると思います。
最初は嫁入り前の身だぞと、飛行艇に乗り込むのを拒否していたポルコですが、大切な機関銃を1機下す決断をするのもまた格好良いですね。
カーチスの機体
引用元:https://plaza.rakuten.co.jp/kurosaurs/diary/201205120000/
ドナルド・カーチスは、ポルコのライバル。
腕利きの飛行艇乗りで、空賊に雇われポルコを倒すために挑んでくる。
最初の飛行艇での対決ではポルコに勝利しているほど、パイロットとしての腕はいい。
カーチスの飛行艇は「カーチスR3Cー0」という機体です。
カーチスが自分の名前をつけたのではなく、当時実在した、アメリカ最大の航空機製造会社「カーチス飛行機&モータース社」のメーカー名です。
戦闘飛行艇は、ほんの一時期に活躍した「幻の戦闘機械」です。
宮崎駿監督は、一時期、一部の国でのみ活躍した飛行艇に焦点を当て、作品の真ん中に置くことで、その憧れを表現しています。
飛行艇にもっともっと活躍して欲しかったのでしょう。
理由があるわけではありませんが、とにかく格好いいから、だと思います。
海と空を自由に行き来するなんて、かっこいい以外の何物でもないではないですか。
まとめ
引用元:https://ghibli-tosidensetu.com/「紅の豚」都市伝説4つの裏話がネット上で話.html
紅の豚は宮崎駿監督が愛してやまない作品の一つ。
それが現れているのが、ポルコとカーチスの乗る飛行機。
赤と黒のコントラストもまた素敵です。
物語中に出てくる、機体のエンジンや部分品、その名前にまでこだわり、リアルに描いています。
紅の豚の主人公、ポルコは宮崎駿監督自身なのではないかと、持論を展開する人もたくさんいます。
知れば知るほどそう思えてきます。
大好きな機械に専門用語に、実在した飛行機製造会社まで、その幼い頃の憧れを全部詰め込んでこの作品はできています。
また、壊れた愛艇を修理することになるのが17歳の女の子というのが興味を引きます。
自分の命を17歳の娘に預けることのできるポルコ。
可能性を信じるだけではできないことかも知れません。
ポルコはフィオに可能性以上の何かを感じ、例えば命懸けでもフィオにやらせて見たいという思いが、ポルコ自身も気がつかないうちに芽生えていたのではないでしょうか。
飛行機なしでは語れない、紅の豚。
青い空に吸い込まれるように飛んで行く赤と黒の機体。
架空のものではなく、きっと実際に飛んでいたと思いたいですね。